ていうはなし

　ちょっとうるさいわね、て思ったら、そう気づいたらあの子がいたの。あの子ってそういうところあるじゃない？にぎやかっていうか、ひとりでも大丈夫！だってわたし楽しいもの！って、にぎやかを通り越してうるさいってこと。あの子にはハッピーな感覚しかないのかしら、て思うじゃない。あなたはよくても周りは迷惑してる、そういうこともあるのよって、そういう子どこにでもいるでしょ？でもあの子のそういうところって慣れちゃうじゃない。仕方ないねって。
　でも、やっぱり迷惑は迷惑よね。こっちは本を読んでいるのよ、いまはテレビを見たいの。そんなときだってひとりでにぎやかじゃない。ばかじゃないの？って思うわよ。ひとの迷惑を顧みない者は幸せにはなれないわよって。

　だからちょっとした意地悪をしたの。意地悪の一つくらい許されるかなって思ったのよ。そしたらうちのママったら、あの子の味方をしたのよ。やめなさい、って。その子はもう長くないのよって。

　そんなこと知らなかった！あの子、もう先がないんですって！でもよく考えると、そうよね、あの子気を使わせるのが嫌であんなににぎやかしかったのね。

　あなた、短い余生を送っているのね。なんだか悲しくなっちゃった。でも、そんな態度、あの子の望んでいることじゃないと思う。

　でも、だからといってあの子を鷲づかみにして空に返すなんてできない。

　だって、せみこわいもの。