目が覚めた

　ここはこんなにも異世界だから、雨音はこんなに違う。

　と思って目覚めたら、雨は降っていないし、午前1時だし。夢か枕元に何かいたのでしょう。

　鬼ごっこをする夢を見ていました。外国人の男の子が鬼で、その男の子はいつも決まった顔ぶれにしかタッチをしないんです。というか、タッチができないんです。まだ外国人に偏見のつよい時代の話です。同じ顔ぶれにしかタッチできないから、そのタッチされる側も辟易してくるわけです。
　で、場所は草原から店の中に移って（夢だからね）、ひとりのタッチされるうちの一人が、関係のないお姉さんを巻き込むんです。着物を着ていてすごい美人のお姉さんなんですけど、鬼ごっこに参加してくれるんです。スーツを着た偏屈そうなおじさんにタッチして「鬼どすえ」って笑いながら言って走ってどこかへ行ってしまいました。お姉さんはなぜか京都弁。
　おじさんも楽しそうにわたしにタッチしてくるんです。ここで初めてわたしという人物が登場するんです。そのころには外国人の男の子も子どもたちもいなくて、大人たちだけが店の中で繰り広げる酔狂な鬼ごっこ。

　わたしが鬼じゃない瞬間、「ここはこんなにも異世界だから、雨音はこんなに違う」と思って目が覚めたのです。

　最初はかわいそうな話だったのに、だんだんとち狂ってくる夢でした。最後まであの子たち出てたら楽しい夢だったのに、消えてしまったから大人だけで行う頭のおかしい鬼ごっこになってしまった。せめてあの京都弁のお姉さんがいてくれれば。

　そして午前1時。こんな時間に目覚めて、どうするの。